今月のご法語は、法然上人が常日頃よくお話しされたものを集めた「つねに仰せられける御詞」より選びました。

 内容は、たとえお念仏以外のことをするにしても、お念仏を申しながらそれをするように心がけなさい。そのことをするついでにお念仏を称えようと思ってはなりません(浄土宗総合研究所編『法然上人のご法語』)となるでしょう。

 このご法語は念仏生活について示されたものであるが、私たちの日常の暮らしは仕事が第一で、二番が家庭、三番が健康、四番が趣味のために時間を割くのが一般的で、残念ながら信仰中心の生活とはなっていないのが現実です。しかしお念仏信仰は本来全身全霊で受け止めるべきものであり、ましてや全ての価値に勝るものですから、生活の合間に実践することであってはなりません。

 南無阿弥陀仏のお念仏こそ阿弥陀様のご尊体であるといただき、常に念仏を称えると名体不離(阿弥陀様の名前と実体が離れず一つになる)と言って、常に阿弥陀様と共に歩む人生となるのです。

 さて私の近所のおばあさんに、畑仕事をしている時も、道を歩いている時もお念仏、朝夕のお仏壇のお詣りはもちろん、何をするにもお念仏の生活で、寝言もお念仏となっている人がおりました。こうなりますと、お念仏を申そうという意思とは関係なく、口癖というより自然にお念仏が流れ出るのです。年を重ねた九十三歳二月のある朝、いつものようにお念仏を称えながら朝食を取っていた時、お念仏の声が聞こえないことに気付いた家人がよく見ると、箸を持ったままの大往生でした。このようになるには、小さい時から宗教的な家庭に育ち、長い年月の中で念仏中心の生活になったものと思われます。

 私たちはなかなかこのようにはいきませんが、せめて仕事しながら、泣きながら、笑いながらお念仏を続けるようにしたいものです。この「~しながら」ということが大切で、このような習慣を続けていくうちにお念仏中心の生活に変わっていくのではないでしょうか。

 しっかりお念仏を申しましょう。

教務部長 井澤隆明