大本山増上寺最大の行事である法然上人御忌法要も、おかげさまで盛大なうちにも厳粛に奉修することができました。

 さて今月のことばは『勅修御伝』巻二十一に所収されている「つねに仰せられける御詞」より選びました。

 このうち烏帽子とは布や紙で作った黒色の帽子で、貴賤の別なく日常的に用いられており、当時は烏帽子をかぶらず人前に頭部を出すことは恥ずかしいこととされていました。

 また十悪とは殺生、偸盗、邪淫、妄語、両舌、悪口、綺語、貪欲、瞋恚、邪見という身口意の三業が犯す十種類の悪のことです。

 法然上人は自分を顧みれば、とても普通の人にも及ばないものの道理もわからず、十悪を犯す愚か者です。しかしお念仏を称えれば必ず阿弥陀様の極楽浄土に往生が叶うということを信じているだけであると申されているのです。

 法然上人は多くの伝記に智慧第一、持戒堅固な僧として描かれています。このような記述は他の宗派の記録にも散見することができ、法然上人の人物像を正しく表現しているものと思われます。

 しかしながら法然上人は自己内省を深める程に、人間の性ともいうべき三毒煩悩を捨てきれない凡夫としての自分の姿を見つめていたのです。そしてこのような私のために発されたのが阿弥陀様のご本願であると受けとめ、念仏一行に帰されたのであります。

 浄土教の教えはまさに「機知」、己れを知ることが出発であります。至らぬ自分の発見は南無と頭が下がり手が合う信仰の世界に続きます。

 自己主張の多い現代人はよくよく思いを巡らすべきです。

 しっかりお念仏を申しましょう。

教務部長 井澤隆明

増上寺