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新年のご挨拶(法主 八木季生)

新年のご挨拶 新しい歳を迎えお慶びを申し上げます。

 その昔、インドで一人の農夫が、自分も年を取って死の近いことを感じて、かねて羅漢果を得れば死を免れることができると聞いていたので、徳名の高い優婆掬多尊者を訪ねて自分の思いを述べたのです。農夫は無学文盲、羅漢位を得ることの難しさを知りませんでした。

 尊者はこの農夫の仰信の強いことを察知し、羅漢果を得たいなら、自分に付いて来なさいと言って、峨々たる山に登り老木の枝が千尋の谷に突き出ている樹に登るように命じました。老夫は言われるままに樹に登り枝に両手でぶら下がっていたところ、尊者が「右の手を離せ」「左の手を離せ」と言われるので両脚で枝につかまっていたところ、「右の脚を離せ」「左の脚を離せ」と言われるので、口で必死になって枝をくわえていたところ、尊者が下から「汝の欲しいものは何だ」と言われたのです。口を開けば千尋の谷に落ちて一命を失うことになる、その時農夫は「羅漢果が得たい」と言ったのです。農夫の仰信は直ちに羅漢果を得て奇瑞を生じて得度の相を示し、尊者にお礼を言ったということです。仰信、字を入れ替えれば信仰、人生に何より大事なことです。

法主 八木季生



新年のご挨拶(執事長 友田達祐)

 謹んで新春のお慶びを申し上げます。

 浄土宗では5年後(2024年)に「法然上人浄土宗開宗八百五十年」を迎えます。

 法然上人のご苦労を偲び、報恩の誠を尽くすべきこの勝縁はまた、私たちにとりまして誠に重要な節目でもあります。

 現在の日本はオリンピックや万博の開催が決まり、平和で大いに繁栄しているように見えますが、一方では人口減少や地方の過疎化、家族制度の崩壊等、大きな社会問題を抱えており、寺院及び檀信徒皆様にとりましても、避けて通れない重大事であります。

 こうした将来への漠然とした不安に対して、私たち浄土宗寺院・僧侶は今こそ宗祖が掲げられた「凡入報土」のみ教え、お念佛を称えれば全ての人が平等に救われていく、いつでも・どこでも・誰でもが称えることができるお念佛こそ、実りある人生実現へのただ一つの道であることを、檀信徒様はじめご縁につながる人々に伝えていかなければならないと思うのであります。

 増上寺は、昨年末「宗祖報恩のための事業」、「ご寺院・檀信徒さまの思いに応えるための事業」「文化財修復事業」「大地震に備える整備事業」を策定し、「開宗八百五十年奉修要綱」として各御寺院様にお送りさせていただきました。

 就中、三解脱門の解体大修理、大殿屋根瓦の総葺き替えは、増上寺の象徴とも言うべき建物の大改修であり、大地震に備えるとともに、末永くこれらを維持していくためには、どうしても今思い切った手を打たなければならない喫緊の課題であります。

 八百年御忌事業が円成して間もない時期に再度の浄財勧募をお願いするのは誠に心苦しいところではございますが、何とぞご協力、お力添え賜りますよう伏して御願い申し上げます。

執事長 友田達祐