お知らせ

浄土宗開宗850年奉賛局だより(8月)

2023.08.01

風に吹かれて


 今年の立秋は8月8日。涼風が欲しくなりますね。この夏、皆さんはどのような風を感じているでしょうか。熱風、生暖かい風、それともクーラーの風でしょうか。

 地域や季節の違いによって、また同じ場所でも時刻によってそれぞれの風があります。もちろん増上寺にも風は吹き渡ります。増上寺の境内、特に三解脱門に思いを致す時、これまでの400年間に一体どんな風が吹き抜けていったのか興味が湧いてきます。

 大松原に吹く潮風を受けた時代もあったでしょうし、高度経済成長期には車の排ガスを含んだ風を全面に受け、ちょっぴり煤けたこともあったでしょう。現在はビル風が吹き込むばかりかもしれません。梅雨時には湿った風が、冬には乾燥した冷たい風が吹き抜けていったことでしょう。大きな歴史の移り変わりの風にさらされながらも、その威風を失うことなく三解脱門は気高く立ち続けています。日比谷通りの喧噪の中にあって、芝の鐘を風韻と表現するなら、三解脱門は風雅という言葉が似合うように思えます。

 増上寺の三解脱門は、長年風雨にさらされ、しかも地震に揺られてきました。そのため幾度となく修理の手が加えられています。多くの人がそれぞれの思いを持って門をくぐったように、数多の職人さんが様々な想いを込めて門の修理をしてくれました。

 浄土宗開宗850年慶讃事業としての令和の三解脱門の修理は国の重要文化財を後世に伝えていくという大きな目的をもって進められます。皆様の三解脱門に対する想いとお力添えが大修理の追い風になります。朱塗りの威容が一層引き立つハッピーエンドになればうれしく思います。

奉賛局部長 中村瑞貴