お知らせ

浄土宗開宗850年奉賛局だより(12月)

2023.12.01

省みて、また歩む

 すさまじい暑さの夏が過ぎ、虫の音に安らぎ、名月を愛でたと言っているうちに今年も師走を迎えました。皆さんはこの1年をあっという間だったとお感じでしょうか、それとも長い1年だったとお思いでしょうか。

 明年に迫った「浄土宗開宗850年」。増上寺では、その記念事業を着々と進めてまいりました。特に本年は皆様が安心安全にご参詣いただけるよう、また地域の防災に寄与できるようにとの思いを込めながら大殿の耐震補強工事を行いました。工事の間、施設の閉鎖や立入制限をしたことでご参拝にご不便をおかけしてしまいましたことを申し訳なく存じます。

 記念事業を進めるにあたり、増上寺では幾度となく議論を重ね周到な準備をしてまいりました。もちろん増上寺自体の護持のこと、文化財保護の面もありますが、増上寺を支えて下さっている様々な方々に今一度増上寺の魅力と役割をお伝えしたい強い思いもありました。たった数年の間のことですが、種々の事業を進めていく中で改めて確認させられたこと、ご指摘を受けて初めてわかったこと、応援をいただいたこと、そして厳しい叱声をいただいたことがありました。

 法然上人が浄土宗をお開きになってから850年。法然上人もそのご生涯で帰依をして下さった方もおられたでしょうし、逆に批判を浴びせる人もあったでしょう。浄土宗も時の流れや世の中の価値観に左右されながらも850年の時を刻んで、現在存立しているわけです。

 長い時間と短い時間。時間の長短の差はありますが、その時々でその時代に生きる人間が経験することはそれほどの差はないのかもしれません。増上寺の境内で850年の時の流れを具体的に感じることは難しいかもしれません。しかしながらその半分に近い年月、時代の流れを受け止めて立ち続けてきた三解脱門があります。その柱に手を添えて門の400年にわたるつぶやきを聞いてみるのもいいかもしれません。

 ぜひ大晦日には三解脱門をくぐり、除夜の鐘の音に1年の煩悩を振り払ってください。

 浄土宗開宗850年慶讃事業完遂に向け、増上寺の思いと皆様の思いに齟齬が生じないよう奉賛局一同気を引き締めて歩んでまいります。

奉賛局部長 中村瑞貴