浄土宗開宗850年奉賛局だより(6月)
2025.06.01
貴重な文化財を守るために
昨年6月の東京の平均気温は23.05度。過去30年間で2番目に高かったということです。毎年6月は梅雨寒なのか夏の暑さを想像するのか、着るものに迷う候でもあります。この時期、浜松町から増上寺に向かいますと、日によっては雨に煙る三解脱門を見ることができます。もちろん気温が上昇すると陽炎に揺らぐ三解脱門にも出会えるのですが、それよりもやはり雨に煙る佇まいの方に趣を感じてしまいます。年初から令和の大修理が始まりました。それによって三解脱門の姿はほぼ隠れてしまい、残念ながら四季折々の魅力的な三解脱門の光景を味わえなくなってしまいました。4月恒例の御忌大会で、唱導師様に三門楼上から散華が降りそそぐという景色もしばらくはお休みです。
関東大震災や80年前の東京大空襲にも耐え、雨に洗われ風に磨かれ長い年月を経て味わい深くなった三解脱門。多くの方に親しまれておりますが、一方で経年の傷みも増してきたところです。工事完了予定の令和14年まで、素屋根(現在建設中)の中で様々な修復が行われることになっています。貴重な文化財を守るために屋根瓦はもちろんのこと、木材の部分、漆の仕上げなどその作業は膨大な上、専門の技術が必要とされる繊細なものとなります。また皆さんご存じのように増上寺は江戸・東京の名所として浮世絵や錦絵の題材として取り上げられてきました。特に三解脱門は多くの作者によって描かれています。今回の修復では浮世絵等で表現されてきたその姿に少しでも近づくように取り組んでいます。修復の完了した三解脱門を臨める日を楽しみに待ちたいと思います。
工程表通りに三解脱門を囲む足場が築かれ、東京タワーや高層ビルを背景に巨大クレーンによって素屋根の鉄骨が吊り上げられます。現代の工事現場を見るたびに、三解脱門が建築された江戸時代寛永年中の工事が偲ばれます。当時はどのような足場が組まれ、どのような工法が取られたのでしょうか。そしてどれくらいの人が工事に携わり、それを眺める人もたくさんいたに違いない等いろいろと想像します。今回の工事でも、歩道が狭くなったり、風の強い日には三解脱門に蓄積された埃が舞ったりなどご迷惑をお掛けしております。皆さんのご協力ご理解を頂いてこの事業が進んでおりますことに改めて感謝申し上げます。
合掌
※浄土宗開宗850年を記念して制作しました「散華」を100枚以上ご希望なさるご寺院様に限り、送料のみでお分けを致します。ご法要や檀信徒様への記念品としてお使い下さい。詳しくは、850年奉賛局までお問い合わせ下さい。
奉賛局部長 中村瑞貴