お父さん お母さん ナムアミダブツ

 人は言葉を操る生き物です。自分の思いを人に伝えたい時、相手がどんな人か知りたい時、私たちは言葉を交わし合い理解を深めます。ある調査では親が子供に多く使う言葉が「早くしなさい」だそうです。対して子供が多く使う言葉は「おかあさん(おとうさん)」です。子供の「おかあさん」を聞いていると、その一言に色々な気持ちを乗せて声を出しています。

 お母さんにお願いしたい時、甘えたい時は、優しく「おかあさん」と言いますし、怒っている時、わがままを通したい時には強く「おかあさん!」と言います。一つの単語に様々な気持ちが含まれます。

 南無阿弥陀仏と声に出して称える行為を「念仏」と言います。念仏とは阿弥陀仏が私たちを救いたい、極楽浄土へ導きたいと願って、仏の名前を称えた者、すなわち南無阿弥陀仏と称えた者を必ず迎えに行くというお約束の言葉です。悩み・苦しみから離れた存在、仏と成るためには、本来長い時間絶え間ない努力をしなければならないところを、ナムアミダブツの一声にて私たちは極楽浄土へ往き、間違いなく仏に成ることができるのです。

 皆さんはお念仏にどのような気持ちを乗せてお称えしていますでしょうか。ご自身が極楽浄土へ往生するため、先立った人たちの菩提を追善するため、中には早すぎた別れを惜しみながらお称えする。色々な気持ちを乗せてナムアミダブツをお称えしていることでしょう。どのような気持ちであっても阿弥陀仏は私たちが称えたお念仏を聞き漏らすことなく、その発した声のもとにお迎え下さいます。そんな仏様ですから、私たちも心から仏様を頼ってお念仏をお称えしたいものです。私たちが阿弥陀仏を頼る時は、小さな子供が親を頼るよう、名前を読んだら必ず助けに来てもらえるのだという気持ちでお念仏をお称え下さい。

♪一声も 南無阿弥陀仏と 言ふ人の
  はちすの上に のぼらぬはなし
 「源空寺の御詠歌」

 

本山布教師 泉 祐樹
静岡教区 浄土寺