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増上寺88世法主 八木季生台下 ご退任

この度、増上寺88世法主 八木季生台下におかれましては、本年7月31日をもちまして、ご退任されることとなりました。

増上寺88世法主 八木季生台下 ご退任にあたり

 日々の生活の中で、一番影響を受けるのは天候と気候です。地球上のあらゆる地域に、四季の変化があると思っていましたが、変化のある地域は、限られた場所だけと知って、驚きを感じたのは小学生になってからでした。

 イタリアの作曲家のビバルディが「四季」という有名な曲を作っていますが、初めてこの曲を聴いたのは、小学生の頃、学校からプラネタリウムの観察に参加した時、明るい会場が次第に暗くなっていく時に聴いた「四季」の中の「春」を聴いた感激が、クラシック音楽の愛好家になった始まりです。曲名が四季ですから、春のほかの夏・秋・冬もあるのですが、どういう訳か春だけが知られています。今年も春が過ぎて梅雨の時期になり、夏の暑い時期になりますが、百人一首に持統天皇が「春すぎて 夏きにけらし白妙の 衣ほすてふ 天の香具山」という名歌を謳われた雰囲気を感じます。現代の新型コロナウイルスの感染に怯えている時代と違って、変化する周囲の状態の移り変わりに、心の動きを合わせて生活する、そのようなことのできる時代の到来が、これからも期待することができることを願っています。

 気候に四季があるように、人生にも誕生から死に至る変化があります。私にも人生の少年、青年、壮年、晩年を経過して、老年が訪れました。それらのすべてが仏縁に恵まれた変化でしたが、老年も九十二を過ぎると思うように体が動かなくなり、約十四年間法主を勤めさせていただきましたが脚の動きが悪くなり、加行道場と璽書道場のある伝法道場である増上寺の法主を、本年七月を以て退任させていただくことに致しました。長年にわたり温かいご支援、ご交誼をいただき誠にありがとうございました。日本の首都に存在する名刹が、末永く念仏信仰の道場として発展することを願って、ご挨拶とさせていただきます。至心合掌

増上寺機関誌『三縁』7月号「あおい」より掲載