今も昔もお念仏

  浄土宗の宗祖・法然上人は、1175年(承安5年)に浄土宗を開かれました。2024年には、浄土宗は開宗850年を迎えます。

 法然上人が活躍した鎌倉時代は、社会的に非常に不安定な時代でした。鴨長明が執筆した随筆『方丈記』には当時の京都の様子が次のように記されています。

  • 「二年間、世の中は飢饉と水不足に苦しんだ。春から夏まで日照りが続き、秋には台風や洪水のため、穀物が全く実らなかった。」
  • 「年が明け、疫病が流行りだし、世の中はますます悪くなった。道端で息絶える人の類は数え切れない。鴨川の河原には死体があふれ、馬や牛車が通れないほどだった。」
  • 「大地震が起こった。山は土砂崩れを起こし、津波は陸地を飲み込んだ。地割れも発生し、そこから水が噴き出した。建物はすべて壊れてしまった。地面が揺れ、家が壊れる音はまるで雷のようだった。この後3か月ほど余震が続いた。」
 このような天災、社会不安に翻弄された当時の人々は、仏教に救いを求めました。この時代に法然上人が説いた、南無阿弥陀仏のお念仏を称えるすべての人が平等に阿弥陀様から救われる道、浄土宗の教えは人々の心の支えだったに違いありません。

 かたや今の時代、猛暑や大雨などの異常気象、頻発する大地震、そして、今までの日常を一変させてしまった新型コロナウイルスの蔓延。現代はかつて法然上人が生きた時代と重なる部分が多いのです。

 不安なこの世において、私たちの心の拠り所となるのが、今も昔も南無阿弥陀仏のお念仏です。阿弥陀様の救いを信じて、南無阿弥陀仏のお念仏を称えれば、必ず阿弥陀様の世界、極楽浄土に往くことができる、これが浄土宗の教えです。

 こんな不安な世の中だからこそ、南無阿弥陀仏のお念仏による阿弥陀様の救いというものを再認識すべきなのではないでしょうか。どんな時代であっても、阿弥陀様の救いを信じる心と南無阿弥陀仏のお念仏をお称えすることの大切さを忘れない私たちでありたいものです。

本山布教師 板垣孝寿
山形教区 長源寺