今月は増上寺年間最大の行事である法然上人御忌法要が、4月4日より7日まで奉修されますのでぜひご参詣下さいますようご案内申し上げます。

 さて渋谷入道道遍は、法然上人の遺文集である『西方指南抄』に聖人根本の弟子なりと記されている。出身は相模国高座郡渋谷荘石川郷で、熊谷直実などと同じ法然上人に帰依した関東武士の一人で、長く京都におられて法然上人に近侍したという。この道遍様に伝えられた法然上人のご法語を今月のことばに致しました。

 その内容は、往生をするためにはお念仏が第一で、学問は必要ありません。ただしお念仏を称えて往生できると信じられるようになる程には、学問を修めるべきです、となるでしょう。このように念仏するのに学問はいらないが、念仏をすれば往生ができるのだということを知る程度のことは学んでもよろしいでしょうと言われております。

 法然上人の代表的なご法語である『一枚起請文』にも「学問をして念の心をさとりて申す念仏にもあらず(中略)智者のふるまいをせずしてただ一向に念仏すべし」と説かれています。このように法然上人は終始一貫お念仏はその道理や理屈・筋道などを考えたり理解したりするのではなく、ただ一筋に声を出して称えて下さいと述べられているのです。

 お念仏は称えれば一秒もかかりません。漢字で書けばたった6文字の実に簡単なものですが、その中には阿弥陀仏のあらゆる功徳が包摂されており、阿弥陀仏のおさとりそのものなのです。

 法然上人は人間の智性や理性をどんなに磨いても、その奥に潜む人間の性ともいうべき愚性、煩悩性を見つめられ、自らはさとれない凡夫であるとの自覚に立つべきであるとして、ただ仰いで称えることの大切さを申されているのです。

 しっかりお念仏を申してまいりましょう。

教務部長 井澤隆明