今年は暑い日が遅くまで続き、ようやく秋らしくなったと思ったら一気に寒くなり秋がなく冬が来たような昨今です。

 今月の御法語の出典である「三心料簡および御法語」は『醍醐本法然上人伝記』の中に、二十六ヶ条の御法語と共に、法然上人が善導大師の説く阿弥陀仏の浄土へ往生したいと願う者が持つべき三種の心(三心)について解説したものであります。またこの『醍醐本』には「善人なをもて往生す、況んや悪人を乎の事、口伝これあり」の一文があり、ここから親鸞上人の言葉とされる悪人正機説の起源が、実は法然上人であるといわれています。

 さて「今月のことば」は『阿弥陀経』の「若一日若二日~若七日一心不乱」の経文の一心について解説しているところです。現代文にすると一心とは、何を一つにするかといえば、ひたすらお念仏を称えることで、阿弥陀様の御心と私の心とが離れないようになるのです、となるでしょう。さらにこの御法語には表記しませんでしたが、続いて世間でいうなら恋する人の思いを、恋い慕われている人が受け止め、互いの心がぴたりと合って、必ずその恋が成就するようなものです、と人々の恋愛に例えてわかりやすく述べられています。

 また同じようなことは『選択本願念仏集』の最後に「念仏の行、水月を感じて昇降を得たり」と述べられ、天上の月がおのずから地上の水に映るように、仏と我らがいかに隔たりがあっても、み名を称えれば仏は直ちに応えられ、仏の心と私の心が離れないようになるとも説かれております。

 私たちは法然上人のみ教えである「ただ一向に念仏すべし」の実践行を通して、阿弥陀様のみ心に触れ包まれ、凡夫ながら穏やかに生活し、来世はお浄土へ参らせていただきたいものです。

教務部長 井澤隆明