早いもので今年も師走を迎えます。

 さて、今月のことばは法然上人が66歳の建久9年(1198年)、前関白九条兼実公の懇情によってお念仏の教えを纏められた『選択本願念仏集』より選んでみました。

 現代文にすると、念仏を申す人は五種の嘉誉に恵まれ世の人々に好ましい人として認められ、さらに観音・勢至菩薩が影のように寄り添ってお護り下さるという現世の利益を受けるのです。また浄土に往生してやがて仏にならせていただけることは来世(当来世)に受ける念仏の利益です、となるでしょう。

 さて法然上人の教えの核心は命終を期とする救いであり念仏を申せば必ず来世は浄土に往生し救済されるとするもので、この確信(安心立命)に生きる人生こそ、死生ともにわずらいなしという信仰生活なのであります。

 しかしながら法然上人は『観無量寿経』に示される、念仏をする者は観音・勢至菩薩が寄り添ってお護りいただけること、さらには煩悩まみれの世の中で、その汚れに染まらずに咲く白蓮華(芬陀利華)のような素晴らしい人になるという現世に受ける功徳も説かれているのです。

 中国の善導大師も『観無量寿経疏』の中で、この白蓮華のような人を好人・妙好人・上上人・希有人・最上人と呼び五種の嘉誉として、念仏者を誉め讃えております。しっかりした念仏者の戒名に誉号を附与されるのもこのことに由来しております。

 一般的に浄土宗の教えは来世往生が中心で、現世の救いはあまり説かない傾向にありました。よく葬式仏教などと評されることが多いのもこのような事情が強調されているのでしょう。しかしながらお念仏は現世においても、このように大いなるご利益を頂戴するのです。

 五濁悪世の世の中で煩悩具足の私たちが、念仏者として人生を全うできるのも、現当二世のお護りがあるからなのです。

 生けらば念仏の功つもり、死なば浄土にまいりなん、との思いそのままにお念仏を申して現当二世のお救いにあずかりたいものです。

教務部長 井澤隆明