迎春

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 さて、平成31年1月号の今月のことばは『勅修御伝』28巻に記載され、また総本山知恩院より発行されている『元祖大師御法語』第四「出世本懐」として知られているものの一節であります。

 現代文に致しますと、「念仏は阿弥陀様にとっても衆生に利益を与えるための本願であり、釈尊にとっても世にお出ましになった本当の理由であります」となるでしょう。

 浄土三部経の一つ『観無量寿経』には仏心とは大慈悲であると説かれておりますが、この大慈悲心を具現化されたのが念仏往生の本願であり、具体的には念仏となります。

 難しい行ではできる人だけの救いとなり、すべての人が平等に救われることはありません。そこで阿弥陀様は人間が声を出し名を呼んでコミュニケーションをとっていることに思惟を深め、すべての人を救うために阿弥陀様のみ名の中に仏の功徳のすべてを摂め取られたのがお念仏なのであります。

 また同じ三部経の『無量寿経』を説かれるお釈迦様は、光り輝き神々しいお姿で不思議に思った弟子の阿難様がその訳を聞くと、今よりすべての人を救う最高の教えである本願念仏を説くからであると答えられました。

 つまりお念仏はすべての人が救われる最高最善の教えであり、阿弥陀様の慈悲心の結晶なのであります。このことを私たちに教え伝えるためにお釈迦様がこの世にお出ましになったということです。

 お釈迦様に念仏申して浄土に往生しなさいと勧められ、お念仏を申したら必ず救うと阿弥陀様にまた迎えられるという確信をもって、この人生を大安心の中に生きてゆくのです。

 私たちは二尊のあわれみにはづれ本願にもれないようしっかりお念仏を申しましょう。

教務部長 井澤隆明