4月は大本山増上寺最大の儀式である法然上人御忌法要が奉修されます。そこで今月のことばは法然上人の心を尋ねてみたいと考え、門下の隆寛様に伝えられた言葉に致しました。

 隆寛様は元天台宗の人で、特に叡山浄土教に造詣の深い学僧でありました。後に法然上人の門下に連なり、『選択本願念仏集』を相伝され、多念義を主唱されました。また法然上人滅後の嘉禄の法難にて陸奥の国に流罪となり、下向中相模の国にて生涯を畢えられました。

 内容は、ある時隆寛様は『阿弥陀経』について法然上人に尋ねました。すると昔私は『阿弥陀経』を呉音・漢音・訓読でそれぞれ一回ずつ、毎日三回読んでおりましたと述べられ、続いて今月のことばのように『阿弥陀経』のこころは、つきつめればひたすらに念仏を称えなさいということなので、今は読誦はせずただ一向にお念仏を称えているばかりですと仰せになられました。

 『阿弥陀経』には極楽浄土が西方十万億の仏土を過ぎた所にあり、その土に阿弥陀様が今も説法されていることや、極楽浄土の荘厳、そして東南西北上下におられるあらゆる仏様(六方諸仏)が、阿弥陀様のすばらしいことを誉め讃えていることなどが説かれています。さらに尊いところは、この世の中でどんなに良い行いも少善根であり、お念仏こそが大善根であることや、お念仏を称えた人は臨終に阿弥陀様が来迎し、必ず極楽浄土に往生できると述べられていることです。

 法然上人が『阿弥陀経』は念仏申せと説かれていると述べられているのは、まさにこのことであります。

 これは『一枚起請文』の結語にて「ただ一向に念仏すべし」という法然上人のこころそのものです。

 しっかりお念仏を申してまいりましょう。

教務部長 井澤隆明