今月のことばは法然上人のお伝記である『勅修御伝』28巻より選びました。内容は、念仏往生の願は阿弥陀様が法蔵菩薩であった時(本地)の願いなのです。念仏以外の様々な修行はその時の願いではありません、となるでしょう。

 法然上人は二者択一の論法にて全仏教の修行を次第に純化し、浄土往生の行を念仏一行に集約するという選択の考え方に立ちました。そして念仏こそ阿弥陀様の本願であり、この選択をされたのが阿弥陀様であるという「選択本願念仏」の考え方を主張しました。

 これは全仏教をまず聖道門と浄土門に分け、そして浄土門を阿弥陀様にかかわる正行とそうでない雑行に分け、さらに正行を読誦・観察・礼拝・讃歎供養の助業と称名正行の正定業に分け、この正定業である念仏が阿弥陀様の本願であるとされました。

 また法蔵菩薩の発された48願の内容をよく見てみるとその多くが、私が建立する極楽浄土はこうでありたい、このようにしたいということが述べられています。つまり極楽浄土に行ってからのことが多いのです。そうすると極楽浄土に行くこと、つまり往生することが最重要となります。この往生について示されたのが第18番念仏往生の本願であり、48願中念仏往生の本願が、本願中の本願で「王本願」といわれる由縁であります。

 このように見てまいりますと阿弥陀様は、念仏以外の様々な修行は全く願われてはいません。阿弥陀様が願われたただ一つの行であるお念仏をしっかりお称え致しましょう。

教務部長 井澤隆明