今月のことばは『信空上人伝説の詞』です。
 信空上人は黒谷叡空上人の弟子で、師の亡き後は兄弟子である法然上人の弟子となった上人最初の門弟であります。元久元年南都北嶺による念仏停止の折り「七箇条起請文」を認め比叡山に送りましたが、190人の門弟の第一番目に署名されている高弟です。この信空上人に伝えられた法語を今月のことばにしましたが、内容は次のようになります。

 悪行を廃し善行を修めることは、諸仏の統一した教えであるが、今を生きる私たちはこの教えにことごとく背を向けています。阿弥陀様の発した四十八の誓願(別意の弘願)にあずかれないとしたら、生死の迷いの世界を離れられない私たちではないでしょうか。

 ところで『増一阿含経』の「七仏通誡偈」は、仏教徒の根本規範を示したものと古来いわれています。「諸悪莫作 修善奉行 自浄其意 是諸仏教」、わかりやすくいえば、悪いことはしないで善いことをしよう。そして自らの心を浄くする、これが諸仏の教えです。ということですが、そんなことは言われなくともわかっているといいながら、小さな子供でもわかるこのようなことを、なかなか日常生活で実際に行っていくことは難しい煩悩具足の私たちでもあります。

 人を殺してはいけません。実際に殺さなくても心で殺していませんか。嘘をついてはいけません。他人のものを盗んではいけません。みだらな異性関係は慎みましょう。酒を飲んで他人に迷惑をかけてはいけません。こんな当たり前のことを守っていますか。静かに深く自己を省みた時罪深い自分の姿が見えてまいります。はるか昔から六道を輪廻し今日まで重ねてきた罪業は計り知れません。しかしこのような私たちのために発されたのが阿弥陀様の慈悲の結晶であるご本願であります。

 そのご本願の中心はお念仏です。しっかりお念仏を申して救われてまいりましょう。

教務部長 井澤隆明