増上寺の境内もつつじの美しい季節を迎えました。先月は法然上人御忌法要が厳しい環境の中、皆々様のお力添えを得て無事成満することができました。厚く御礼申し上げます。

 さて今月のことばは増上寺の朝のお勤めでも毎日拝読させていただく「一紙小消息」の一節を選んでみました。

 このご法語は、現在の三重県名張地方に住んでおられた黒田の上人という方に、法然上人が遣わしたもので浄土宗のみ教えの要点を簡潔にお伝えしております。お題は一枚の小さな紙に書かれたお手紙(小消息)という意味ですが、浄土宗の大切な念仏信仰を伝える五重相伝会において、初重『往生記』の最後に全文が収められており、浄土宗にとっては『一枚起請文』と共に大事な二大法語といわれております。

 ところで今月のことばは乗願往生といって、私たちは阿弥陀様の本願に乗じて往生するのであり、決して自分の力で往生するのではないことを示しています。自分で念仏を申したことで往生するのではなく、あくまでも阿弥陀様のはたらき、力によって往生することができるということです。

 法然上人は阿弥陀様の四十八の本願をまとめると念仏往生の本願になるが、その念仏の中には万徳所帰といって、阿弥陀様の仏としてのあらゆる功徳が納まっている絶対的なものであるから必ず往生することができるというのです。

 この本願に乗ずるとはどのようなことでしょう。例えば東京から京都へ行くとしますと、東京駅から新幹線に乗り京都へ向かいます。新幹線に乗ってしまえば、自分は何もせずとも京都駅まで運ばれていきます。ただ一つ乗るという行為をしなければなりません。この乗ることが阿弥陀様を信じ念仏を申すことになります。阿弥陀様の慈悲は広大で罪悪深重な私たちを、彼岸の世界に向かう大きな乗り物を用意して、そこに乗ることを勧めています。

 しっかりお念仏をお称え致しましょう。

教務部長 井澤隆明