辞世の言葉

 浄土宗のある冊子で、私が大変お世話になっている布教師の先生が『辞世のことば』という本を紹介されていました。様々な分野で歴史に名を残している人々がこの世を去る直前に残した最期の言葉や俳句などを解説している本です。この本を読みまして、浄土宗の宗祖法然上人がお遺し下さった、辞世の言葉のことを改めて考えました。

 法然上人は、建暦2年(1212年)正月二十五日の正午頃に極楽浄土に往生されましたが、正月二十三日に「一枚起請文」というご遺言をお書きになった後は、二十五日に往生される時までずっと、「南無阿弥陀佛」のお念佛を称え続けられました。そして最期の時に、あるお経の一節をお誦みになり、極楽浄土に往生されました。そのお経とは「光明遍照 十方世界 念佛衆生 摂取不捨」であります。阿弥陀様の救いの光は、余すことなくこの世界全てを照らして下さっていて、お念佛を称える全ての人々を、決して見捨てることなく必ず救い取って下さる、という意味であります。

 『辞世のことば』の著者によれば、辞世の言葉とはその人の全てを表現した言葉であり、その人が今まさに求めるものを表す言葉であるということですが、辞世の言葉をそのように捉えた上で、法然上人が最期に「光明遍照 十方世界 念佛衆生摂取不捨」と仰ったことを考えますと、法然上人はこの世を去る間際まで、阿弥陀様が「我が名を称えるもの全てを、一人も漏らすことなく極楽浄土に往生させる」とお誓い下さったご本願におすがりする『お念佛の御教え』によって、この世の全ての人々を救いたい!とお考えになっていたことが、本当に良く伝わってまいります。

 法然上人が最期までお伝え下さった通り、阿弥陀様の救いの光は、必ず私たちを照らして下さっております。これからも阿弥陀様を深く信じ、極楽浄土に往生したいと心から願って、共に南無阿弥陀佛のお念佛を称えながら日々を過ごしてまいりましょう。

南無阿弥陀佛

本山布教師 飯田英知
尾張教区 清浄寺