新年も変わらぬお念仏

 除夜の鐘を聞きながら1年を振り返る方、初日の出を拝まれる方、初詣をされる方、おせち料理を食べられる方、普段と変わらぬ生活をされる方、様々な方がいらっしゃると思いますが、本年も新たな年を迎えました。

 新年は心新たにとの思いが巡る季節です。しかし、どんなに年が改まっても、私たちの心はなかなか変わりません。人をうらやみ、腹を立て、つい自分本位になってしまう。思いどおりにならない現実に苦しみ、心乱れるのが人間の姿です。

 法然上人は、「自身は現にこれ罪悪生死の凡夫なり、曠劫(こうごう)よりこのかた常に流転して出離の縁なし」とお示しになりました。まさに、迷いの世界を巡るしかない存在、それが私たち凡夫です。

 しかし、その私たちをこそ救おうと誓われたのが阿弥陀様です。阿弥陀様は「どんな人も、たとえ罪深く愚かであっても、わたしを信じ念仏するなら必ず救い取ろう」と誓われました。

 お念仏とは、阿弥陀様の大いなる慈悲にすべてを委ねて称えること。阿弥陀様は、私たちが自力の修行では救われぬと知って、そのすべてをお引き受け下さった。だからこそ、私たちはただお念仏に身をまかせればよいのです。

 人生は、病気、災い、失敗、思いもよらぬ苦しみや別れ、そのたびに心は揺れ動きます。「南無阿弥陀仏」と声に出すたびに、阿弥陀様は「もう大丈夫だよ、必ず迎えに行く」と優しく語りかけて下さる。そこにこそ、この世で得られる何より確かな安心感があると思うのです。

 悲しい時も、うれしい時も、「南無阿弥陀仏」とお称えすれば、阿弥陀様は必ずそばにおられます。そして、やがて命の終わるその時には、阿弥陀様が必ずお迎えに来て下さいます。「南無阿弥陀仏」と称えるその声のままに、安らぎのお浄土へと導かれていく。それが法然上人のお示し下さった救いの道です。どうかこの新しい年も、日々変わらぬお念仏と共に歩んでまいりましょう。

本山布教師 小林惇道
東京教区 妙定院