ともに往き生まれて

 「紀子、兄さん姉さんと会って楽しくしているか」

 ご自宅にお参りに行くと、お仏壇の上にお祀りしている娘さんの遺影に向かってお父さんが語りかけていました。このお仏壇の上には娘さんの他にお父さんのお兄さん夫婦の遺影もお祀りしてあります。子供がいなかったお兄さん夫婦は紀子さんを実の娘のように可愛がり、紀子さんもまたそんなお二人が大好きだったそうです。

 紀子さんは40代半ばに癌が見つかり、そこから15年ほど苦しい治療に耐えながら頑張ってこられました。しかし、その甲斐も虚しく、とうとう積極的な治療ができなくなり、自宅で緩和ケアを受けることとなりました。徐々に弱っていく自身の体、今日1日の命の不安を抱えながらもご両親とお仏壇のお勤め、お念仏は毎日欠かさなかったようです。

 このお念仏のみ教えは阿弥陀様のお救いにより、この苦の世界を厭い離れて、必ず苦の無いお浄土に往き生まれる、つまり往生をさせていただくみ教えであります。それは阿弥陀様が私たちの苦しみや想いを受け止め、救うために計り知れない長い修行を経て、極楽浄土を構えて下さり、誰もができるお念仏にて必ず救い取ると誓って下さったからです。その阿弥陀様の誓い、お慈悲の心を頼りにお念仏を称えたならば、極楽に生まれ、そしてそこで愛しい方との再会もかなうのです。

 生前よくお寺の法要にご参加下さり、法話も聞いておられた紀子さんはご自身の信仰から日々のお念仏にて必ず往生ができる。そして今阿弥陀様のお慈悲の光に守り導きの中、往生を遂げた先には大好きな叔父叔母と再会がかなう。命の行く先をしっかりと極楽浄土に求め、お念仏をお称えされたわけです。その絶対的な安心感から心穏やかにお浄土に旅立たれたそうです。

 もうすぐお彼岸を迎えます。お念仏をお称えし、阿弥陀様のお導きの中、またいずれ先立たれた方との再会を念じ、共に極楽往生を求め、お念仏生活を歩んでまいりましょう。

本山布教師 石橋圭示
和歌山教区 浄恩寺