させていただくという気持ち
2025.11.01
私は、ご先祖様のご供養をさせていただく時に心がけていることがあります。それは、「させていただく」という気持ちです。お寺にいらっしゃる檀家さんにも、「ご供養させていただくという気持ちを大切にして下さいね」とお願いしています。
浄土宗の元祖法然上人は、「初めに至らぬ自分に気づくことが大切で、その上にたって仏様の救いを信じて下さい」とおっしゃいました。大切な仏様の教えを信じられるようになるためにも、まずは未熟であるという謙虚な気持ちや心構えを持つようにと諭されているように思います。
近年「コンプライアンス」という言葉をよく耳にするようになりました。重大なコンプライアンス違反の発覚がたびたび世の中を騒がせています。
以前ある有名な車屋さんが不適切な仕事をしたために問題となったことがありました。社員の方たちは、目的達成のために精一杯仕事をしていただけだったでしょう。最初は理不尽だと気付きながらも、常態化した日々に不適切であるという感覚が麻痺して、あるいはそうせざるを得ないと自分に言い訳して追従する人もいたかもしれません。
組織の上層部や地位と権力を得た一部の人たちが、大切な心を忘れてしまった結果だと私は思います。仕事をする前提としてお客様のために「私がさせていただきますよ」という気持ちが働いていたら問題となることはなかったのではないでしょうか。
ご供養の心や信心というのも、最初からしっかりとお持ちになられている方はなかなかいらっしゃらないかと思います。まずは「させていただく」という気持ちをお持ちいただきながら日々「南無阿弥陀仏」とお称えして参りましょう。そして、少しずつでもご供養の心や信心を深めていただければ幸いです。
本山布教師 吉水義浩
栃木教区 善念寺
三分間法話







