生死解脱の道

 コロナ禍の中、一つの社会現象までになりました、『週刊少年ジャンプ』で連載されていた吾峠呼世晴さんが描かれた『鬼滅の刃』という漫画をご存じでしょうか。社会現象になるには様々な要因がありますが、連載終了後もアニメの続編が制作されるなど、根強いファンがいるのは間違いありません。2020年10月16日には待望の映画が公開され、日本国内での興行収入400億円超えを記録し、日本歴代興行収入第1位という記録を打ち立てました。私も上映開始後すぐに映画館に足を運び鑑賞させていただきました。映画の内容はとても感慨深いものでありました。映画の作中で「老いることも、死ぬことも、人間という儚い生き物の美しさだ」という台詞が私の中で強く心に残りました。

 改めて老いや死がなぜ私たちに訪れるのか考えてみると、仏教的解釈で説明させていただくのであれば、この人間の世界が無常であるからといえるでしょう。無常とは「常ならざること」で、ものごとは常に変化しているということであり、人の命もまた同じです。「生は偶然、死は必然」という言葉がありますが、この私たちにいつか必ず死が訪れるのは間違いないことであり、生きている限り、老いであるとか死というものにとらわれてしまう私たちではないでしょうか。そのような私たちではありますが、今、人として生まれたからこそ、老いや死という悩み苦しみから離れる方法である仏教に出会うことができたのです。

 浄土宗の教えは、お釈 様が本懐の教えとして説かれた、阿弥陀仏のお救いを信じ、お念仏をお称えし、人として命が終わる際には、迷い苦しみの無い仏の世界である西方極楽浄土に往き生まれさせていただくことであります。法然上人がお示し下さったお念仏の教えは、迷い苦しみから離れることが難しい私たちでも救われる唯一の道なのです。「儚い生き物」である私たちでありますが、阿弥陀仏のお救いを信じ、共々にお念仏をお称えしてまいりましょう。

本山布教師 脇川公暢
神奈川教区 正覚寺