幸せとは......

 本年は法然上人が浄土宗を開宗されてから850年という記念の年でございます。その節目の年に浄土宗では、「お念仏からはじまる幸せ」というキャッチコピーを掲げております。

 では、「幸せ」について考えた時にどのようなことを思い浮かべますか。

 健康で美味しいものを食べられた時、自ら掲げた目標が達成された時、家族との団欒の時間を過ごしている時、色々な場面で幸せを感じることがあるでしょう。しかし、それはある日突然失ってしまうかもしれません。病気や災害に見舞われたり、愛する家族やペットとの離別、思わぬトラブルに巻き込まれたりと、そうした悲しいことや苦しいことが次々に起き、自分の思い通りにならないのが人生ではないでしょうか。

 「幸せとは築くものではなく、気付くもの」

 このように、幸せを築こうと思って努力しても、なかなか掴めないのが現実であります。たとえ掴んだと思っても、それは一時の儚く消える幻のようなものです。むしろ、築くことばかりに捉われるのではなく、いつまでも私たちの幸せを願って見守って下さり、常に寄り添っていただけるお方がいらっしゃることに気付かなくてはなりません。それが阿弥陀様なのです。

 阿弥陀様はお慈悲のみ光を誰一人漏れることなく、私たちに照らして下さっております。そのみ光に気付かなければ、私たちはいつまでも暗闇の中を彷徨い続け、迷い・苦しみの世界から離れることができなくなってしまいます。阿弥陀様は「我が名を呼べ。さすれば、どんな者でも必ず救い取ってみせるぞ」とお誓い下さいました。だからこそ、そのお誓いに応えて、「南無阿弥陀仏」とお念仏をお称えすれば、阿弥陀様が必ずやあなたの現世での苦しみや迷いを取り除き、楽しみや幸せが溢れる清らかな世界の極楽浄土へとお救い下さるのです。

 どうぞこれよりは、あなたの傍にある幸せに気付き、共々にお念仏を日々お称えしてまいりましょう。

本山布教師東京教区 後藤史孝
東京教区 天然寺