浄土の楽しみ

 先日、お父様が亡くなられて、ご葬儀の打合せにご長男夫婦がお寺に来られました。席に座るとすぐに「虫の知らせってあるんですか?」とお尋ねになりました。詳しくうかがうと「実は、父と母と3人で食事に行く夢を見たんです」。

 私は心の中で、お母様は3年前にお浄土にご往生されているなあ、お優しいお母様で、お盆にご自宅に伺うと一緒にお念仏をお称え下さったなあと思い起こしていました。

 すると、ご長男が続けて「夢の中で僕と両親と食事をしていると母がニコニコしながら、父に向かって、すごくいいところだから行って見ましょうよといったのです。それから、僕一人をお店に残して、二人で出て行ってしまったんです。そんな夢を見た翌日、父が亡くなったと連絡があったので、とてもびっくりしました。母は最後まで父のことを気に掛けていたので、心配だったんでしょうか」とお話し下さいました。

 法然上人のお言葉に「先に生まれて、後を導かん。引摂縁はこれ浄土の楽しみなり」とあります。

 つまり、先立つ者が残された者を導きましょう。縁ある人を迎え取ることは浄土の楽しみです」とあります。恵心僧都源信の書かれた『往生要集』には、浄土に生まれた者が受ける十楽(十個の楽しみ)があると書かれています。引摂縁はその中の一つなのです。

 先にご往生された奥様が、極楽浄土は、良い所だから、一緒に行きましょうとは、なんとありがたいお言葉でしょう。息子さんにそのお姿を見せることで、息子さんに心配入らないよとお伝え下さったように私は感じました。

 お念仏をお称えすれば、臨終の時に阿弥陀様がお迎えに来て下さる。そして、先に亡くなったご縁のある方も来て下さるなら、とても心強いことです。そのためには、日々お念仏をお称えしてお過ごしいただければと思います。

合掌

本山布教師 戸田由美
神奈川教区 善然寺