また会う日まで

 私が住んでいる地域では、ほとんどのお宅でお盆に精霊棚を飾ります。一年に一度、ご先祖様が家に帰って来るのをお迎えするためです。棚経でお家に伺いますと、天井まで届く大きな笹を棚の四方に立て荒縄で飾る大掛かりなものや、畑で採れた新鮮な野菜やお庭の花を飾られた棚など様々です。初日には、迎え火を焚いてお迎えします。
新盆の方は、初めて帰って来るので、迷わないようにと白い提灯を灯します。お盆の間は、朝昼晩とお食事をお供えします。大体メニューが決まっていますが、その家に代々伝わっているレシピもあります。また、帰る日には、近くの街にご先祖が買い物に行くといわれていて、お弁当にお赤飯のおにぎりを用意します。最近では、亡くなられた方の好物をお供えされる方もいます。ある方は、朝食にご主人が好きだったコーヒーとトーストをお供えされていました。また、息子さんを亡くされたお母さまは、息子さんの好物だったオムライスにケチャップでハートを書いてお供えされていました。亡き方を思う温かいお気持ちが伝わってきます。

 「お盆に亡き方が帰ってくるなんて、信じられない」という方もいるかもしれません。目に見えないし、科学的には証明されていません。しかし、亡き方のために用意した精霊棚に「必ず帰って来る」という思いによって、不確かなものが、確かなものとなるのではないでしょうか。

 法然上人のお言葉に「決定心によりてすなわち往生の業は定まるなり」とあります。必ず往生できるという思いによって、たちまち念仏による往生が確かなものとなるという意味です。

 深く信じる心を持って、お盆には、亡き方をお迎えし、阿弥陀様のお誓いを信じて、いずれまた会う日まで、日々お念仏を申してお暮しいただければと思います。

本山布教師 戸田由美
神奈川教区 善然寺